The Hottest Summer

 プノンペン(カンボジア)にいたことがあるというと、(特に夏場などは、)どれくらい東京よりも暑いんですか、などと尋ねられることがあります。これは実は鉄板のネタでして、(もちろん、年によって違うでしょうが、)夏場はむしろ東京の方が気温が高いです、とお答えすることで、大抵の人に驚いていただけます。実は、プノンペンは4月から5月頃が一番暑い季節なので、8月という単時的な気温の比較において、東京の方が暑いからと言って、東京がプノンペンより暑い都市であるとまでは申しませんが、それでも、湿度や都市化が進んでいて地面からの照り返しもすごいことなどの諸条件を考慮すると、夏場の東京は南国居住経験を有する私からしても相当凄まじいものです。

 ところで、ご承知のとおり、私は裁判官だったわけですが、裁判所は、省エネルギーの観点や予算の関係から、冷房の設定温度は高く保たれていたので、冷房がかかっていてもじんわりと汗ばむほどでした。また、その冷房も夕方には切れてしまうのですが、(非常に)しばしばその時間内で仕事は終わらないので、夕方以降や休日に、汗だくになりながら仕事をしていました。仕事が遅いからだといわれればそのとおりなのですが、毎日のことですから段々とうんざりしてきますし、昨今の気候からしますと、その期間は下手をすれば3カ月以上に及んだりもするため、夏場というのは、なかなか長くつらい季節でした。

 裁判官と弁護士の仕事にはそれぞれ良いところ、悪いところがあると思いますが、冷房の運転についての権限を有していることは、弁護士になって得た、小さいながら確かな幸せの一つです(なお、寒さには強いので、暖房についての権限を有していることは特に弁護士としての優位性にはなりません。)。今年の酷暑にあって、その思いを強くするとともに、さすがに古巣のことが心配になっていたのですが、風のうわさによると、東京地裁では、冷房の設定温度は低く、稼働時間は長くなった上、部分的には休日にも冷房を入れるようになったとのことです。裁判所は、三権の中では最も予算配分が少なく、また、組織としての性格上、理屈を大事にする組織であるところ、冷房の運転には予算の制約もあるでしょうし(建物の図体が大きいので、1日稼働するだけでも相当な電気代を要すると聞かされたことがあります。)、休日の冷房などは、事実上、休日出勤を前提としたものとなるため建前上もなかなか難しいかと思っていたのですが、日本の暑さが、ついに建前を凌駕したということなのかもしれません。

 そのような次第で、今後は、東京の夏の凄まじさを説明するのには、裁判所が休日に冷房を入れるほどです、とお答えできるかもしれません。などとわかりにくい冗談はさておき、OBとしましては、裁判所の知人のためにも、上記のような措置が今夏の酷暑に対応するための時限的なものではないことを祈念しております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ブログ

前の記事

縁と運とタイミング③
ブログ

次の記事

Sound Sleep