ライフオブパイ

 何度か書いていますが、私は司法試験浪人をしていた経験があります。合格する保証もない中で浪人をするのはそれなりに辛かったですが、他方で、そのころにできた友人もいたり、そのころに始めた趣味もあったり、とかけがえのないものも得られたのであって、思い返せばよい思い出です。

 などという風に思うのは、多分に司法試験に合格した観点からの意味付けです。人生は一度きりであり、起こったことをなかったことにはできませんから検証のしようもないですが、仮に、私が、最終的に司法試験に合格していなかったら、おそらく浪人時代の意味付けというものも、今とは異なっていたことと思います。それに、例えば、この後、別の業界に行くなどしたとしても、多分、司法試験浪人の意味付けというものは変わるんだろうと思います。

 要するに、人間は物語を生きているのだ、ということだとつくづく思います。そして、それをテーマにした芸術作品も数多くありますが、そんな作品の一つに、映画「ライフオブパイ」があります。これは、乗っていた船が海難事故にあい、トラなどと一緒に漂流することとなった、愛称がパイというインド人の青年を描いた物語です。3Dで公開されていて、なかなか映像にも凝った作品でそれも魅力の一つなのですが、それをメインにした作品なのかと思いきや、しばしば、どんでん返し系の映画として言及されるほど筋書きにも凝った作品です。どんでん返し系、とか、外連味たっぷり、といった作品が好きなので、評判を聞いて興味を持ち、見てみたのですが、どんでん返しといえば確かにその通りなのですが、私としては、それに驚かされたとか、そのトリックを面白く思ったというよりは、そういった筋立てを使って思った以上に正統的なテーマを描いていることに感銘を受けました。そのことこそが、逆説的などんでん返しということかもしれないと思ったりもします。

 本作は、実はアカデミー賞を4部門もとっているのですが、その割に、なぜかマイナー感が強いような気がします。確かに、こういう作風の作品は、そういう風に扱われがちだよな、と思うのですが、好きな映画の一つですので、少しでも興味を持っていただいたら、ぜひご覧ください。

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