留学中に学んだこと①

 アメリカに留学していたときに受けていた授業で印象に残ったことの一つに、ロースクールでは一体何を学んでいるのか、という議論をしたことがあります。

 自分がどのように答えたのか,というようなことは全然覚えていないのですが,その場における結論としては、法律家らしく考えること(to think like a lawyer)ということだったと記憶しています。

 もちろん、アメリカにも様々な考え方があるんだと思いますし、それが多数派の考え方かどうかも不勉強にして知りません。でもこれが印象に残っているのは、こういう答え方は例えば、日本ではなかなかされないものであって、いかにもアメリカらしいと思ったからです。

 私がアメリカらしいと思ったのかについて、言語化されなかった部分から本質が零れ落ちることを恐れずに分析を試みると、①短くまとまっている、②(ロースクールの学生への回答として)実用的である、③循環論法的面白さがあるといったあたりが理由なのではないかと思いますが、この辺りはアメリカ人にも聞いてみたいところです。

 ともあれ、確かに、ロースクールでは、様々な分野の様々な次元における法律家らしい考え方というものに触れることができました。そして、その中では、根本的な理論面の相違を感じて新鮮に思うことも多かった一方、実務というレベルでは、そうした理論面の相違にかかわらず案外似たような発想で仕事をしているんだなと思うことも多くあり、面白くおもうとともに、それまで実務家として経験を重ねる中で無意識的に獲得してきた「法律家の考え方」というものについて考えるよすがとなったような気がします。

 異文化や新しい環境に飛び込むことは、普段見逃しがちな「気づき」を得るよいきっかけとなるものです。私は、裁判官時代にも留学に加えてカンボジアでも働いていましたが、多分そうした経験が楽しかったからなのだと思いますし、裁判官をやめた一つの動機もそこにあるのではないかと思ったりもします。

 そういう意味では、留学中に学んだことの中で、その後の人生に最も大きな影響を与えたのは、間違いなく、「知らない環境に飛び込むことは楽しい」という根拠のない信念なのだと思います。近時は新型コロナウイルスの影響で、世界の様相もずいぶん変わってしまいましたし、自分自身も年齢を重ねていて、今後の自分の人生にどれほどそうした選択の機会が残っているかはわかりませんが、そういうときに、知らない環境に飛び込むことを過度に恐れ過ぎない自分でありたいものだと思います。

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