日本は首相公選制を導入すべし。是か非か。

 私が高校3年生の夏休みに,「全国中学・高校ディベート選手権(ディベート甲子園)」の第1回大会が開催されました。今は地区予選などもあるようですが,当時は、第1回であり,知名度も低かったためか,(正確には,書類審査があるという記憶ではありますが,)地区予選はなく,いきなり全国大会から始まりました。高校時代の思い出に,何か全国レベルの大会にも出てみたいと思い,何の経験もないまま,無鉄砲にも出場することにしました。この段階で分かっていたことは,(競技)ディベートの試合は,自分がよいと思う立場を表明するスピーチではなく,いずれの立場にも立って,反対側の立場に立った相手と議論をし,それぞれの立場のメリットデメリットの重大性,深刻性とそれらの発生可能性を乗じたもの(いわば期待値ということになるでしょうか。)を比較して勝敗を決する,という程度でした。また,ディベートには,様々なスタイルがあるようですが,ディベート甲子園は4人一組のチーム戦で行わるということでした。

 出場するためには,引率の教師と一緒に出てくれるメンバーが必要だったのですが,負けず嫌いの私は,素人なりに必死に考えて,一緒にやって最も勝てる可能性が高いと思ったメンバーに声をかけて,やったことがないから(当然ですね。)と渋る3名を無理矢理巻き込み、引率と指導は,学生時代,ギリシャ哲学を専攻しておられたという先生にお願いしました。これが今から思えば、その後数か月続いた幸運のビッグウェーブの始まりでした。

 練習において,先生は,我々に,主要な論点について,肯定論,否定論を抽出し,それぞれがどのように反対側の議論を否定するものであるか,ということを考えさせるということをしました。高校生には,なかなか難しい作業で,当初はせいぜい,自分の考えた立論を紹介することしかできませんでした。先生は,メンバーが考えてきた議論について,いとも簡単に否定してみせ,感心するメンバーに,返す刀で,それに対する反対論を論じてみせました。メンバーは,先生は二枚舌だ,と先生を冷かしたりしましたが,そんなとき,先生は,「肯定,否定それ自体に価値はなく,その議論には深浅がある,そして,その深浅は,反対論を否定できるか否かで決まる」というようなことをいい,メンバーに深く考えることの重要性を説くのでした。短期間の練習ではありましたが,そうしていく中で私を含めたメンバーは,何とか,議論をすることができるようになるとともに,多少なりとも議論とは何かということと,その面白みを理解したのでした。

 第1回大会ということで,一部の学校を除いては,試合経験も乏しいところがほとんどでした。我々のチームも大会の第1試合が人生で初めての試合でしたし,おそらく相手も似たようなものであったのだろうと思いますが,運よく勝利することができました。巡りの良さもあり,1試合ごとに得た反省点を次に生かすことができる形で,試合が消化されていき,我々は,最終的には,本命の一つといわれていた高校を下し,見事優勝することができました。多分大会関係者もびっくりしたと思います。

 優勝した瞬間のことは今でもよく覚えています。

 当時,大会は,東京ビッグサイトの国際会議場で行われたのですが,大会委員長の講評後,会場は暗転し,ドラムロールが短く鳴った後,ステージの後方のスクリーンに優勝校として,我々の高校名が映し出されるとともに,司会者が我々の高校名を読み上げられた瞬間,私は絶叫し,チームメイトのひとりと抱擁しました。あれは間違いなく,人生で最も興奮した瞬間でした。

 あれから四半世紀以上が経ち,人生では色々なことが図ったようにうまくいくこともあれば,とにかく悪い目ばかりが出るときもあるということを,あの時よりは分かるようになりましたが,大会の存在を知ってから,優勝するまでの数か月というのは,僕の人生で最もよい目が出続けた期間でした。今から思えば,もっと現実的なメリットがあるところでその幸運を活かしたかったような気もしないではないですが,このあたりは,言っても詮無きことです。あれから四半世紀も立ち,状況もめっきり変わってはしまいましたが,それでもあの時の思い出は色あせずに残っていますし,大会が取り上げられた当時のクローズアップ現代の録画の中にも,若干劣化しつつも残っていて,落ち込んだときなどは,いつでも追体験できるというのも幸運の一つです。

 また,先ほどインターネットで検索したところ,ディベート甲子園は今も続いており,今年の8月7日にも,第26回大会が開催されるようです。出場される方で,このブログを見ている人はいないのではないかと思いますが,ともかく頑張ってほしいと思います。

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