法律たらむは忍ぶべからず。
B型肝炎ワクチン追加接種プログラムというものがあります。簡単にいうと,献血の際に,B型肝炎の抗体の有無を調べ,それを持っている人にワクチンを追加接種して,抗体を増やそうとするものです。この抗体は,一定の値を超えていると,献血の際に取り出すことができ,免疫グロブリン製剤という薬剤の原料になるのだそうですが、ワクチンを追加接種しても,その増加の程度や,増加している期間は個人差が大きいようでして,追加接種をしても必ずしも増加しなかったり,増加したとしてもすぐに戻ってしまう人もいるのだそうです。
私はカンボジアに行くときに,たくさんの予防接種を打った成果なのか,抗体を持っているということで2年ほど前にプログラムの対象に選ばれました。その後半年程は測定上限を振り切っているほどに抗体をたくさん生み出したようで,数度にわたって抗体の取り出しに協力したのですが、しばらくすると,献血に行っても何も言われなくなりました。もう基準を下回ったのかと残念に思っていたのですが,先日献血に行くと,唐突に検査され,その結果,測定上限は下回っていたものの,なお,基準値を上回る抗体を持っていたとのことで,引き続きプログラムに協力できることとなりました。
ところで,タイトルは,鴎外の舞姫の中にある主人公の内心の独白の一部でして,上記タイトルは,「我母は余を活きたる辞書となさんとし、我官長は余を活きたる法律となさむとやしけん。辞書たらむは猶ほ堪ふべけれど、」との前置きに続いて出てきます。私が舞姫を初めて読んだのは大学一年生の時だったのですが,活きた法律になるのはそんなに嫌なことなのか,と思うとともに、法学部に進学する前に読んでおくべきだったと後悔したことを記憶しています。そして,なぜ、今回、このようなタイトルにしたかと言いますと,私が上記プログラムの対象に選ばれたことを、ある友人に話したところ,その友人から「人間ワクチン製造機になるわけですね。」といわれて、この一節を思い出したからです。
とはいえ、太田豊太郎と異なり、人間ワクチン製造機になることは望むところでありまして、誰を憎む心もなく、願わくばできるだけ長く活きたるそうであり続けたいところではあります。
皆様も献血にはぜひご協力ください。