人はいつ老いるのか

  例えば、判決に不服がある場合には、上訴をして上級審で争うことができる場合がありますが、法律上は、原則として、判決書の送達を受けた日から2週間以内に上訴をしなければならない旨の定めがあります(例外もありますが、詳細は割愛します。)。もしも、この期間内に上訴を提起しないと、判決が確定して争いえなくなるわけですから、いつまでであれば上訴できるか、というのは大事な問題です。

 このように期間制限がある場合、それを過ぎると重大な効果が発生することがありますから、法律上、期間をどのように計算するかということについては、意外に重要です。

 この点については、民法に原則的な規定が置かれているところ、細かく見ていくと色々とややこしいのですが、原則は以下の3つの条文に定められているといってよいと思います。それが以下の3条です。

第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

第141条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

第143条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

 これらを使って判決書の送達を受けた日から2週間以内というのがいつまでか、というのを、たとえば、令和4年4月7日に判決書の送達を受けた場合で考えてみたいと思います。

 「送達」には色々な方法がありますが、裁判所で書記官から直接受け取る場合があります。この場合、午前零時に送達を受けることは現実的にあり得ません。そうすると、第140条本文によって、4月7日は期間の初日として期間に算入されないので、期間の起算日は4月8日になります。そして、4月8日の2週後の週において、4月8日に応答する日は、4月22日となりますので、143条2項本文によって、期間が満了するのは、その前日である4月21日となり、さらに、141条によって、その日の終了した時点で満了ということになります。すなわち、上訴を提起するのであれば、4月21日が終わるまで、ということになります(期間の末日が祝日だったりすると変わるのですがここでは割愛します。)。

 なお、「1月30日から1か月以内」を、初日不算入で計算すると、1月31日が期間の起算日となりますが、2月に「31日」はないため、143条2項但し書によって、2月の末日(28日か29日)が期間の末日ということになります。

 法律には、様々なところに「期間」についての規定があります。法律なので、時効制度のように、一定の期間内に何かをしなければ、権利が失われる、とか、逆に期間が経過すると何かが得られる、というように、権利関係に重大な変動を来す旨の定めが多くあります。1日違いで、とれたはずの手段がとれなくなるということもないとは限りません。ご相談をされるのであれば、早めにしていただいた方がよい理由の一つといえようかと思います。

 年齢計算について若干触れたいと思います。この点、年齢を、いわゆる満年齢で数える場合も、おおむね上記の期間計算と同じように考えるのですが、一つ大きな例外があり、年齢計算については、出生の日も期間に算入するというルールとなっています。したがいまして、例えば、令和3年8月5日に生まれた人は、令和4年の8月5日が応当日となり、その前日である令和4年8月4日が終了したときに、1歳となるということになります。また、うるう年の2月29日に生まれた人については、平年には、2月29日がいないので、143条2項但し書により、平年2月の末日である2月28日の終了時に年を取るということになり、時に冗談でいわれるように4年に1回しか年を取らないわけではありません。

 ところで、あえてここまで明確に言及せずにきましたが、ある日の「終了」時、すなわちその日の午後12時(24時)というのは、その日の最後の瞬間なのですから、その日に含まれると考えられます。すなわち、人の年齢が増えるのは、誕生日の前日が終了した時点ですが、その時点は、誕生日の前日に含まれていますので、年齢が増える「日」は誕生日ではなく、誕生日の前日ということになります。ちなみに、この考え方と、「保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。」(学校教育法17条1項本文)を組み合わせると、4月1日生まれの人がいわゆる早生まれと扱われる理由になります。

 最初にこの理屈を聞いた時には、うるう年の関係も含めてよくできているような、それでいて腑に落ちないような気持になったことを覚えていますのでご紹介した次第です。ともあれ、人はいつ老いるのか、という問いについては、その詩的な回答の一つに、「人は信念と共に若く、疑惑と共に老いる」というものがありますが、以上説明したところによりますと、「人は誕生日の前日に老いる」というのが、(日本の)法的な回答ということになります。

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